天才柳沢教授の生活 25 (25)
三年ぶりに新刊が出た、我が家の愛読コミックの一つです。
少年時代の逸話二編は、いつもながらホロリと感動させられます。
その他、携帯メールの話など笑える話、父親を亡くした学生の話など、傑作揃いでした。
柳沢教授は、9歳で大学レベルの学力を持ち、シェイクスピア研究家であるお父さんの大学の講義を聴きに行ったりしています。
お父さんの講義だけでは物足りないから、他の講義も聴けるようにしてくれと言ってお父さんを困らせます。
まだ子どもだからダメだと言われると、もう大人だと主張するところが子どもらしいのですが。
生真面目な息子とは正反対のタイプのお父さんは、大人の世界に息子を連れて行きます。
裸体像を描く画家や、キャバレーを経営する親友にも会わせます。
9歳の少年には理解できない世界、理解できない友情の絆、本を読んだだけでは理解できないことがたくさんあることを教えようとします。
論理的な思考を身につけ、それに従って行動できるのが大人だ、と思っていた柳沢少年は、わけがわからなくなります。
学校では、休み時間にも本を読み、友達と無邪気に遊ぶことができません。
本人は、読みたい本があるから外で遊ばない、と言ってますが、遊ぶ楽しさを理解できないのでしょう。
学校の成績はトップで、さらに大学生レベル以上の本を読む柳沢少年は、クラスでも一目おかれ、(戦前の話なので)軍事教練に参加しなくても誰も文句言いません。
ところが、勉強もできないで、誰とも遊ばない目立たない友達が、
「柳沢くんは、頭が良くない」
と言います。
周りの友達はびっくりして怒り、本人もショックを受けます。
(と言っても、本人はみんなと違って思慮深い大人、と思っていますから、なぐろうとする友達を一応止めますが)
何故だろう、どういうことだろう、と疑問を持つと、解明せずにはいられない柳沢少年は、自分の気持ちを抑え、どうしてあんなことを言ったのか尋ねます。
「君は、曖昧なことがわからない。
だから、人が言った裏側の気持ちがわからない。
劣等感がわからない。
普通の人が、普通にわかることがわからない。
でもこれは、欠点ではないよ。
君の特質なんだ」
まさにそうだ、と思い当たりました。
論理的に証明できないこと、感情的な行動など、まわりの人間の不可解な行動(普通の人にとっては普通の反応)、また、自分に時々わき上がる嫌な感情が、柳沢少年には理解できません。
そう言い当てた友達は、人間観察に優れ、クラスの友達のそれぞれの特徴を見抜き、将来はどんな大人になるだろうと想像することを楽しんでいました。
それでは自分は将来どうなると思うか、と尋ねると、
「柳沢くんは、頭良くないし、器用じゃない。
だけど、目の前の問題から決して目をそらさず、まっすぐ受け止めるから、
学校の勉強を超えて、ずっと、本当の意味の勉強を続けていくんじゃないかな」
友達と無心に遊ぶこともできず、喜怒哀楽の感情も理解できず、周囲にとけ込むこともできない不器用な柳沢少年は、こんなユニークな友達にたくさん出会い、それぞれの人間性をまっすぐ受け止めながら、育ちます。
そして、交通ルールなどの規則はきっちり守り、一日のスケジュールもしっかり守る杓子定規な大学教授ですが、ビジュアル系ロックに傾倒した派手な格好の学生(ちなみに娘の彼氏)でもヤクザの学生でも、どんな学生でもまっすぐ受け入れる人間に育ちました。
そんな教授には、難しい本を読むおじいちゃんに憧れる幼稚園児の孫娘がいます。
経済学の本を借りて、ひらがなを拾い読みし、おじいちゃんの四角四面の行動をマネし、おじいちゃんと同じになろうとします。
でも、中身は天真爛漫な子どもで、教授と違っておちゃらけて無邪気に遊べる子どもなのが、とっても嬉しい。
おじいちゃんみたいな天才的頭脳はなさそうだけど、普通に子どもらしく遊べて、普通の感覚が普通に理解できるって、ある意味幸せです。
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